投資化学者の企業研究

個人投資家としての数年来の経験を生かして,企業研究ブログをしています.

化学・素材メーカー 業界研究

化学・素材業界の概要

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化学・素材メーカー各社の売上高vs営業利益

化学・素材を扱う大手メーカーの売上高vs営業利益をプロットした.JXTGやブリジストン三菱ケミカルなどが目立ち,売上高1兆円以下の会社は埋もれてしまっている.

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化学・素材メーカー各社の売上高vs営業利益率

そこで売上高vs営業利益率としてプロットした.すると,先ほどは埋もれていた企業の中には,高い営業利益率を有する企業が多数存在することがわかる.

全体の傾向として,売上高が大きい会社ほど営業利益率が低い傾向がある.規模が大きい製品のほとんどは汎用品であり付加価値がつけにくいため,利幅が小さくなってしまう.

営業利益率の上位には,信越化学や日産化学,ポーラオルビスなどが位置している.これら営業利益率が高い会社は優れたビジネスモデルを有しているため,これを理解することが企業研究の基礎となる.

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化学・素材メーカー各社の営業利益vs時価総額

続いて,営業利益vs時価総額をプロットした.誤解を恐れずに言うと,時価総額とは投資家が評価した企業価値であり,株主に帰属する利益額・利益額の持続性や成長性・ビジネスの競争優位性などあらゆる要素が勘案され算出された値である.

例えば,2000億円程度の営業利益を誇る花王旭化成,出光興産であるが,時価総額では花王旭化成>出光興産の順で大きな差がある.ざっくりと解説すると,花王は景気に関わらず安定した収益を見込める生活必需品を提供し,ブランド力も高く,今後も安定したビジネスが見込める.旭化成は原料価格などの市況に左右されてしまう低収益な汎用石油化学品から,リチウムイオン電池セパレーターをはじめとした高収益な世界シェアNo1の高付加価値製品群まで提供している.そのため企業価値の評価が難しい (コングロマリット) が,これまでの成長から予測すると,今後も時代の変遷とともに新製品を提供し続ける可能性が高い.一方,出光興産は収益のほとんどを石油精製元売りや汎用石油化学品に頼っている.燃料としての石油需要は減少傾向にあり,汎用石油化学品も市況に左右される.事業規模拡大による収益性向上やビジネスモデル転換が求められる.実際に昭和シェルとの合併や機能性化学品の研究開発を進めている.

このように,一口に化学・素材業界といっても,最上流の石油精製から最下流の消費者向け製品まで幅広い.また,それぞれの領域 (上流・中流下流) によって最適なビジネスモデルも異なる.就職や投資を考えるときには,領域ごとに求められるビジネスモデルを理解した上で競争力を有する企業を探し出すことが重要である.