【化学業界研究】エチレンとポリエチレン
【化学業界研究】エチレンとポリエチレン
あらゆるプラスチックの原料となるエチレンと,エチレンから重合される最も生産量の多いプラスチックであるポリエチレンについて紹介します.
エチレンの製法
ナフサ (原油の精製成分) や天然ガス (シェールガスなど) を主とする炭化水素を水蒸気と混合し,800~900℃の高温で熱分解し,生成物を蒸留分離して生産される.
エチレンの特徴
常温で気体のため,輸送には冷凍タンクや専用船が必要である.
エチレンの用途
ポリエチレンの原料として,生産されたエチレンの約5割が使用される.そのほかとして,ポリ塩化ビニールやポリスチレンの原料に使用される.
エチレンの市況情報
シェールガスの調達コストはアジア勢が用いるナフサ調達コストの半分 (2018年現在).そのため,日本勢の競争力が低下している.
ポリエチレンの製法
大きく3種類に分けられる.
①高圧法ポリエチレン
1000~4000気圧で重合する.得られたポリエチレンは長い枝分かれの高分子鎖構造を有するため,低密度となる.
②低圧法ポリエチレン
触媒存在下にて数気圧~数十気圧で重合する.直鎖上の高分子鎖構造を有するため,高密度となる.
③共重合型低圧法ポリエチレン
触媒存在下にて数気圧~数十気圧で1-ブテンと共重合する.直鎖上の高分子鎖構造を有するが,ブテン由来の分岐鎖の存在により,低密度となる.
高圧法と比較して低圧法のほうが,建設費やエネルギー消費が少ないことによるコストメリットを有する.
ポリエチレンの特徴
吸湿率・吸水率が非常に小さい.
水蒸気透過率が小さい.
耐有機溶剤耐性が良い.
逆に印刷・接着には表面処理が必要.
有機溶剤・ガソリンなどの上記や空気,酸素などのバリア性は悪い.
熱による変形温度は高くない.
逆に耐寒性は良い.
分子構造に極性がないため,高周波特性や誘電特性に優れる.(レーダー部材に適する
自己潤滑性があり,耐摩擦特性が良い.
無毒無害であり,安全性が高い.(食品・医療用途に良い.)
紫外線で劣化しやすい.
酸素指数が小さく可燃性である.
ポリエチレンの用途
①低密度PEの用途
フィルム50%,ラミネート紙,電線被覆用途,射出・ブロー成型を用いた用途はあまりない.
②高密度PEの用途
強度・弾性率を活かせるフィルム,上水道パイプ,ガスパイプ,射出・ブロー成型を用いた用途がある.